関東と関西での文化の違いはよく話題になることの一つです。関東から出張や旅行で大阪に行くと、あれっと思うことの一つに、エスカレーターの乗り方があります。
大阪ではエスカレーターの右側に立って、左側を空けるのが普通です。関東ではその反対に左側に立って、右側を空けます。
どうしてこうなったのかと全国的に見てどうなのか、さらには理想的なエスカレーターの乗り方を探っていきます。
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大阪のエスカレーターは右側に立ち、左側を空けるのはなぜ?
関西、特に大阪ではエスカレーターのマナーとして、右側に立って、左側を歩いて登る人のために空けて乗ります。
関東とよく対比されますが、全国的には左側に立つ乗り方が多数派です。
なぜこうなったのだろうと、一度は思ったことのある人も多いことでしょう。
その理由を、日経新聞の調査結果をもとに紹介します。
大阪文化論を研究している前垣和義さん(相愛大学特任教授)によると、「阪急電車のアナウンス」がキッカケだったそうです。
1967年に阪急梅田駅が移転し、その際に3階のホームに通じる長いエスカレーターが設置されました。
その時のアナウンスは
「走って上り下りするのは大変危険ですのでおやめください」
「お歩きになる方のために左側をお空けください」
だったそうです。
このことから、
・エスカレーターに立ったまま移動する人と歩いて移動する人がいて、それを認めていた。
・両方の移動がスムーズにいくよう、左右に分けた。
・その際、立ったまま移動する人は右側に、歩いて移動する人は左側に指定した。
ことがわかります。
その31年後の1998年にこのアナウンスは終了しました。
エスカレーターの安全名乗り方として手すりを持ちましょう、というおすすめに対して、右手が不自由な人は左側に立って乗らざるを得ないからです。
阪急電車によると、なぜ右側に立つようアナウンスしたかは、資料が残っていないそうです。
前垣さんは、
「右手で手すりをつかんで右側に立つ人が多かった調査結果による。日本では右利きが多いので、右手で手すりをつかむのが自然だ」
と推測しています。
しかし、「日本では右利きが多いので」となると、日本全国の傾向として「右立ち」になってよいはずなので、この根拠は弱いですね。
阪急電車が、右利きの人が多いので右立ちが手すりを持ちやすい、便利、程度に考えて「右立ち」にしたのかもしれません。
ただ、この「右立ち」はすぐには定着しなかったようです。
定着したのは、その3年後の「大阪万博」からの説があります。
外国人が多く訪れるので、「国際標準(!?)の右立ち」を徹底したという話です。
この万博説に対し、前垣さんは、「あの大混雑の万博では左を空けるなんて余裕はなかった。そんな呼びかけの記憶もない」と疑問を投げかけています。
これは納得です。
その後、時が経つにつれて関西人のマナーに対する意識が高くなっていき、次第にエスカレーターに乗る時の「右立ち」が定着してきたというのが本当のところかもしれません。
いずれにしても、エスカレーター「右立ち」の習慣は、阪急電車のアナウンスがキッカケだったことは確かだと信じてもいいのではないでしょうか?
あなたはどう思いますか?
全国的にはどうなの?
全国的には「左立ち」が多数派ですが、どこも100%左立ちとか右立ちという地方はありません。
また、両立ち(二人立ち)も少ないですが、流れ次第で出来ています。
ただ、圧倒的に左立ち、右立ちという地方はあります。
Jタウン研究所の調査によると、
まず、大阪は「右立ちが68%」で、左立ち、流れでどちらも立つ人が続きます。
じつは大阪よりもすごい「右立ち」県が「奈良県」です。
奈良県は「右立ちが75%」と大阪よりも多い割合です。
もっとも、人口は大阪の方が多いので、人数の点では大阪が右立ち第1位かと思います。
ついで右立ちの割合が多いのが、大阪の隣、和歌山県です。
右立ちが45%ですが、空けずに両側に立つ人も36%と多めです。
以外なのが京都で、大阪のすぐ隣にもかかわらず左立ちが35%、右立ちが26%と、左立ちが優勢です。
また、流れ次第でどちらにも立つ人が31%と多く見られます。
京都は国内海外を問わず多くの観光客が訪れるので、首都圏をはじめとするその他の地方と同じ習慣になっていると言われています。
実際、私が数年間京都に滞在した時も、左立ちの方が優勢に感じました。
世界の傾向は?
海外ではエスカレーターはどのように使われているのでしょうか?
最近外国人に会うのに苦労しない状況ですが、その中でもとりわけ多いのが中国人です。
そこで中国の東北地方長春市出身の中国人に聞いてみました。
中国ではエスカレーターは右立ちが普通だと話してくれました。
しかし、北京や上海など大都市での朝の混雑では右も左もないようです。
また、日本以上に広い中国のことですから、中には左が標準という都市もあるかもしれません。
その他、アメリカ、カナダ、韓国も右立ちが基本のようです。
ということは、大阪の右立ちは国際標準!?と言ってもいいようです。
エスカレーターの理想的な乗り方は、「歩かない、両側に立つ」がおすすめ
最近は、エスカレーターで歩くことによる衝突や転倒の事故も発生しており、エスカレーターを歩かないよう呼びかけもされています。
特にお年寄りや小さな子供にとって、勢いよく歩いて来る人はとても危険です。
また、同伴者がいる時は同じステップに乗った方が楽しく、片方が弱者だった場合などは特に「両立ち」で支えてあげる必要があります。
「エスカレーターは本来、立ち止まって利用するもので、安全基準もこれが前提」と指摘しているのは、日本エレベーター協会です。
鉄道各社もエスカレーターで歩かない、両側とも立ったままで移動するキャンペーンをしています。
両側に立った方が当然エスカレーターの機械としてのバランスも取れるわけです。
ほんの数秒から数十秒早いか遅いかの違いなのです。
立って安全に乗りたいですね。
とは言っても、人間、我先にという気分はなかなかなくなりません。
片側に立つ乗り方が習慣化したように、今度は逆に両側に立つことを習慣化することが必要で、これには時間が掛かります。
鉄道各社はさらに頻繁にアナウンスをして、両側立ちを文化にする後押しをしてほしいです。
歩いて登るなら階段もあるのですから。
現在、阪急電鉄では「手すりにつかまって黄色い線の内側にお立ちください」のアナウンスに変わっています。
このように、日本ではエスカレーターの片側を歩くのをやめようという動きが、まだまだとは言うものの方向として進められようとしています。
しかし2020年のオリンピックで海外からの訪問者が大勢来日することで一旦右と左が入り乱れてしまうかもしれません。
その人たちにエレベーターで歩かないよう影響を与えられれば素晴らしいことですが、さてどうなるでしょう?
右も左も歩かない文化が始まるのはオリンピックが終わってからでしょうね。
まとめ
今回はエスカレーターの乗り方について、
・大阪のエスカレーターは右側に立ち、左側を空けるのはなぜ?
・全国的にはどうなの?
・世界の傾向は?
・エスカレーターの理想的な乗り方は、「歩かない、両側に立つ」がおすすめ
の項目を解説しました。
今、徐々に片側を歩かない乗り方を広める動きが徐々にではあるものの進んでいます。
乗る人の利便性のみならず安全性を考えた乗り方が早く文化として定着すればいいですね。
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